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2022-01-31 令和4年県土強靱化・危機管理強化対策特別委員会 名簿
2022-01-31 令和4年県土強靱化・危機管理強化対策特別委員会 本文

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  1. 広島県議会 2022-01-31
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     今度は、5軒以上だけではなく、1~4軒、あるいは今はゼロ軒だけれども、近い将来造成される可能性があるものも数えました。資料の合計数で見ると、47都道府県のトップテンのうちのトップスリーは中国地方なのです。1番は広島県、2番は島根県、3番が山口県であります。中国山地がいかに険しいかではありません。中国山地は別に険しいことはなく、四国山地や中部山岳地帯と比べたら、随分なだらかです。風化した花崗岩が結構多いですが、風化した土壌層はほかの地質のところでも残っています。四国山地や中部山岳地帯と比べると傾斜がそれほど急なところが多いわけではない。傾斜がそれほどきつくない。これはどういうことかというと、造成をしたら、人の住む場所がどんどん山奥でも開拓できるということで、昔から山奥のほうにどんどん人が住みつくことができる環境があったということです。  もう一つ、風化土壌が多いということは、それを使って、その中から有益な鉱物を取り出すことができたということです。例えば、お茶わんの原材料の陶土といったものは花崗岩や流紋岩の中にはたくさんあるので、そういう陶土の採取などで、山の中に入り込んでいったことは、山を荒らす原因にもなったかもしれない。それから、何よりも大きいのは、実は花崗岩というのは、風化すると、ばらばらになるのです。真砂化すると言います。そういう性質を使って、ばらばらになった真砂の土壌に鉄砲水をぶつけると、土砂流が発生します。人工的な土砂流をつくると、土砂が水に流されるのですけれども、その中に0.5~1.5%しか含まれていない砂鉄は砂より重たいから、早くたまります。たまった砂鉄を2回目の鉄砲水、3回目の鉄砲水にさらすことによって、より純度の高い砂鉄を取ります。砂鉄は酸化鉄なのですが、その酸素を還元させることによって鉄を作り出す文化をたたら製鉄と呼びます。これが1,000年以上も中国山地を中心に発展して、鉄の一大生産地だったのです。そういうことはすごくお金もうけにもつながるということで、どんどんその原材料を求めていき、また、酸素を還元させるためには木炭が必要です。大量の木炭を作るために、山の木々を大量に伐採して利用する。だから、木炭を作る原材料がなくなったり、砂鉄が簡単に取れるような場がなくなったりしたら、移動するのです。どんどん山奥へ移動します。そして、集落がどんどん発展していくのですけれども、同時に、危険なところにどんどん人が近づいていっている環境もきっとその頃からできたのだろうと思います。その結果がこれだと思います。もちろん、今、広島県はトップでしたが、島根県、山口県も同じです。島根県は特に、砂鉄の採取は随分長いこと、1,000年以上にわたって続けられておりました。  これは、土砂災害警戒区域数の47都道府県のトップテンを上げたものです。欄外に24位の岡山県を上げましたが、やはり広島県が多いです。先ほどの土砂災害危険箇所や土砂災害警戒区域というのは、土砂災害になる可能性のあるところに指定をかけます。すなわち、人間がたくさん住んでいるところということになります。決して土石流や崖崩れ等が起きるかもしれないところを指定しているのではありません。あくまでも人が住んでいるところを指定します。土砂災害危険箇所数や警戒区域数が多いという意味は、土砂災害の原因である土石流、崖崩れ等が起きやすいという自然的素因だけではなく、それが起きたときに、その影響で被害を受ける可能性の高い場所に居住エリアが設けられているという社会的素因が成り立っているようなところ、ここが多くなるということなのです。自然的素因だけで被害を受ける居住エリアがない状況であれば、土砂災害危険箇所や警戒区域の指定対象にはならないということなのです。すなわち、土砂災害となり得る危険なところに多くの人が家を建てて住んでいる状態になっていることこそ、土砂災害の危険箇所数や警戒区域数が多いという結果につながる本当の意味です。  これは、昭和63年──1988年7月の広島県加計町を中心とした土石流災害の写真です。県のパンフレットの表紙を飾っているところです。江河内谷川という幅2メートルぐらいの川を挟んで居住の空間がずっとありました。そこで残念ながら江河内谷川の土石流が発生して、この写真の中だけで9人の方の命が奪われるという土石流災害がありました。私は、この前年の1月1日付で広島大学に来て、翌年、この災害があって、地元の被害を受けた方に応援してもらいながら、励まされながら、毎日のように山の調査とかをやりました。皆さん被災しているのにもかかわらず、本当に親切に、スイカでも食っていきんさいと言って、朝からスイカをごちそうになったり、ただいま帰ってきましたと言って報告をしたり、そういうことをやりました。そうしたら、その地域で災害直後から紙切れを配って、体験したことをメモしてもらうようなことをされていたのです。最終的には冊子になるのですけれども、言い伝えにあった土石流の前兆をつかんで、間一髪で避難していた人が多いということを教えてもらったのです。この地域は200年ほど前の1796年──寛政8年に同じような土石流災害の被害を受けていたことが分かります。土石流によって出た被害を、絵図とか古文書とかいろいろな形でまとめられている。そして、言い伝えの中にも、どういうときには危ないから避難しろという形で残っていました。それを最終的に冊子にまとめられました。見事なものです。そのまとめていく過程に私はたまたま遭遇しました。右側にそのときの中身の一部があります。江河内地区では、川の水が止まると危ないという昔からの言い伝えがあったそうです。また、大雨のときには、谷の水に注意せよ。多い水が少なくなると、避難せよ。鵜渡瀬という地域では、大つえの出る前は、いっときの間、静かになると伝えられています。「つえ」というのは、土石流とか山の崩れることを「つえる」という動詞で呼んだりするぐらいですので、全国的にこの「つえ」という音を地名に残していたりするところが多いです。西調子という地域では、木の根の臭いがしたら逃げよ。辻の河原では、臭い腐葉土の臭いがしたら逃げよ。津浪では、津浪という地名は山津波から由来しているなど、こういう形で言い伝えとして伝えています。みんなは、これを頭に思い描きながら対応していたのだという話も聞きましたし、この冊子の中にもしっかり書いてくれています。  その後、6・29災害というのが、1999年に起きました。先ほどの折れ線グラフで土砂災害危険箇所がぐんぐん増えている状況を見てもらったので、お分かりと思いますが、広島県が決して対策をおろそかにしているのではありません。みんな、一生懸命砂防や治山の行政として対応されています。しかし、防災行政による対策の進捗速度より、はるかに危険なところに宅地造成をして、どんどん家が建っていくというのが多いのです。だから、どんどん危険箇所が増えていく現状がありました。そして、6・29災害がついに都心部で起きてしまいました。  ということで、やはり住民の方にどういう危険性が周囲にあるのかを知ってもらうことが大事ということで、初めてハザードマップの公開がその翌年の2000年から始まったのです。1999年までは、ハザードマップの公開はなされていません。プライバシーの侵害になるとか、あるいは、土地の経済がぐちゃぐちゃになるので、そういうことに対しては反対で、結局、そういう土砂災害の危険な要因があるという情報は、全部行政の持っている情報としてあっただけなのです。これを2000年から公開し始めました。でも、間違っても、土地の値段が安くなったため、土地を買える、家を建てられると言って、危険なところに住む人がどんどん増えると具合が悪い。だから、やはり法律的に、命の危険になるようなところに知らないうちに家を建てて住むようなことがないように、危ないということを伝えなくてはいけない。そこで、土砂災害防止法ができます。これから住む人が命の危険のあるような、いわゆるレッドゾーン相当のところ、土砂災害特別警戒区域に普通に住むための家を建てることはちょっと禁じようといった形の居住制限、建築制限、あるいは、もう既に住んでしまっている方には、自分が住んでいるところがそういうところだということを知ってもらって、少しでも早く自主的、自発的に命を守る行動につなげてもらいたいという大きな2つの目的を達成するために、これまで何回か改定がなされています。  これは、6・29災害のときの山裾で、命を失った場所です。このときに、同時に雨情報、当時はアメダスしか公開されていませんでした。けれども、アメダスは、県内に32、33点ぐらいしかありません。17キロメートル四方に1観測点くらいの密度ですが、土石流とか崖崩れとかが集中発生するときに降ってくる集中豪雨の大きさというのは数キロメートルです。すると、6・29災害のときに広島市内の雨の激しく降ったところは、たまたまですけれども、アメダスの観測所には引っかからなかったのです。呉市は引っかかりました。けれども、広島市は、アメダスだけを見ていたのでは説明がつかなかったのです。それ以外の観測点の情報を使うと、やはり物すごい雨の降り方をしたところで土石流等が集中的に起きるのだということが認識できます。後から災害分析のためにそういう雨のデータを集めて説明ができても、リアルタイムに活用できないと駄目です。ということで、アメダス以外のいろいろな雨量観測点の情報を使えるように広島県がやってくれました。アメダス以外のものを含めてですけれども、当時で290か所ぐらい、そういうものが見えるようになりました。インターネットを使った防災情報の公表もその頃始まりましたので、そういうところも使って、土石流等の引き金になる雨の情報と、それから、素因になるハザードマップの情報とかも含めてどんどん公開するようになってきたというのが、1999年の6・29災害の後に行われたとても大事なソフト的な対策の進捗です。ソフト的な対策というのは、命を守る行動につなげるのに少しでも役に立つ対策という意味です。でも、同時に、砂防ダムあるいは治山堰堤も含めてですが、ハード面の整備も急ピッチで進められてはいたのです。だから、その時点では、広島県は土砂災害への対策、砂防の関係ではリーダーシップが取れるほど進んでいっていると実感していました。  しかし、残念なことに、2014年、8・20災害が起きてしまいました。この写真はヘリコプターに乗せてもらって、私が撮ったのですけれども、本当にもう気の毒な状況でした。緑井から八木にかけて土石流が山の上から人々の生活場を襲っています。この画角の中だけで、50人以上の人の命が奪われてしまうという結果でした。このときの雨は、2時間で200ミリを超える観測点が2か所も出るぐらい、100ミリ平均の雨が2時間続くようなところがはっきりと出るぐらいすごい降り方でした。しかも、降った場所が、山帯を含む、もうちょっと安佐北のほうまでの狭い範囲なのですけれども、麓にたくさんの人が住んでいるようなところで降ってしまいました。もう一つ、降った時間帯が、真っ暗で、とても簡単に対応できるような時間帯ではなかった。こういう3つの悪条件が重なった結果として、多くの人が命を奪われてしまったという言い方ができるかと思います。  その雨の状況がいかにすごかったかというのを、これは今話した内容の根拠になる数字なので、見ていただいたらと思って上げました。大事なのは一番下、例えば気象庁のアメダス、三入観測点の観測データだけ数十年間続いていますので、それを基に確率計算をします。すると、三入観測点で観測された1時間雨量101ミリというのは、右側に100年に1回の確率雨量として求めたものは統計的に65.9ミリとありますので、はるかに超えています。一番右端、500年に1回の雨として、1時間雨量は計算値では78.1ミリです。しかし、実測値は101ミリですから、これもはるかに超えています。500年に1回を上回るような降り方だったようで、3時間雨量は三入観測点で、実測値209ミリです。ところが、右端の500年に1回の3時間雨量、計算値は118.3ミリ、つまり、500年に1回の雨の倍近い降り方をしていたということが言えるわけです。その結果として、これはグーグルアースの画像ですが、左上が災害発生の前、右上が発災後、そして、右下が十数年前から公開されていたハザードマップに描かれていた土石流の位置と氾濫範囲です。右上と右下の画像を合わせると、ほとんどそのまま起きています。こういうことが分かるのです。ただ、この画像は公開されていたのですが、こんな図は見たことないというように、人々の心に届いていなかったということが分かりました。  もう一つ分かったことは、右上の画像に赤い丸で印をつけたところに蛇王池伝説の石碑があるのです。昔、ここで大蛇の退治をした伝説が記録されているわけなのですけれども、大蛇というのは、すなわち昔から竜とかにも例えられる土石流のことです。八岐大蛇(ヤマタノオロチ)伝説の大蛇も同じ土石流です。そういうものがあそこにあるのだけれども、これは8・20災害の翌日、昔、この近くに住んでいたという80歳を超える老人の方から「わしは、昔、あそこの近所に住んでいた80歳を超えるじいさんじゃが、わしは、子供の頃に、おじい、おばあから阿武山には大蛇が住んどるということをずっと聞かされて育った。今度のことで、ようやく意味が分かった」と言って大学に電話がかかってきました。私は、何のことか分からなかったけれども、後から、石碑まであるというのを教えてもらいました。つまり何が言いたいかというと、こういう大事な昔の人が将来に対してメッセージとして残しているものが知られていない、生かされていないということが、この8・20災害、今から8年前の災害でも既に分かっていたということです。  それと、公開されているつもりになっているハザードマップは、必ずしもみんなの心の中に届いていないということが分かりました。もっときちんと説明しなくてはいけないということが分かったということです。  そして、この画像は、非常に申し訳ないのですが、あの矢印の先にあるオレンジ色の建物が県営住宅です。県営住宅が建てられているから、危険ではないのだと思って、みんなが住んだという報道がありました。しかし、よく見ると、県営住宅は一番危ないところを避けて、ちょっとだけ高いところに建てられているのです。一番危ないところは、県営住宅の間の水路とか、外側のほうですが、そこは流路になるところです。右下の土石流が発生したときには、そこを流れています。左上をよく見ると、その県営住宅が建てられなかった危ないところに家がどんどん増えてきていたのです。本当は土砂災害特別警戒区域に指定をして、家が建てられないようにすべき場所であったけれども、ここはまだその指定がなされる前の段階だったので、自由にできました。ここから法律の盲点を突く、逆に危ない実態になっている場合があるのではないかということが分かりました。  こちらは、安佐北区の同じような例です。でも、安佐北区の場合は、左下が先ほどの十数年前から公開されていたハザードマップですが、右下、土砂災害防止法、土砂法と呼んでいますが、これにのっとったいわゆる土砂災害危険警戒区域、イエローゾーンであるとか、土砂災害特別警戒区域、レッドゾーンが指定され、図が公開されていました。これをするに当たっては、住民の説明会が何度も繰り返し行われるので、少なくとも土砂災害の危険なところが家々のあるところ、ほとんど全部にかかっているということを御存じなのです。だから、ここにお住まいのある方は信用していなかったけれども、実際に今回災害を体験して、本当に怖いのだということがやっと分かった。今度から真面目に防災訓練に参加しようと思うという体験談を残してくれました。そういうふうに、つまり、住民の説明会を何度も繰り返した上で公開し、それを基にして防災訓練とかを2年ぐらい続けて、その後にこの災害に遭遇しているので、生かされるという実態がありました。このようなことを言ったら怒られるのですが、安佐南区の犠牲者は71人です。安佐北区の犠牲者は6人です。合計77人です。6人の安佐北区の犠牲者のうちの3人は、非常に気の毒に、消防士の方が子供をもう少しで助けられるかというときに、2回目の土石流が起きて巻き込まれてしまいました。この写真の右上にある土石流ですが、これで2人が命を奪われました。もう1人は、御老人の方で早い段階で集会所に避難されていたのです。そこは土砂災害のための避難場所ではなかったのですが、そこに土石流が襲って、集会所の中で命を落とされました。この方を含めて3人、合わせて6人が安佐北区の犠牲者です。それに対して、安佐南区は、安佐南区といっても、安佐南区全体ではなく、阿武山の麓とかに限った話ですけれども、71人という物すごい数の方が犠牲になっています。この違いというのは、非常に大きな違いだと私は思っています。  また、資料の左上は安佐南区、右下は安佐北区の雨の降り方です。これを見ると安佐北区の降り方のほうが強いことが分かるので、そういう意味では、安佐北区のほうがよほどすごい災害になっていそうなのですけれども、先ほど言った結果としての災害の規模というふうにいうと、71人の命が奪われた安佐南区の災害のほうがはるかに甚大な災害という言い方ができることになります。  8・20災害のときに、私が非常に具合が悪かったのではないかと思うのは、避難勧告の発令が遅れたために犠牲者が多くなったと、もう最初のときから言われ続けていたことです。内閣府の会議でもそうです。この内閣府の会議をどうして開くことになったかというと、広島県で避難勧告が遅れたために、70人を超える甚大な犠牲を払う災害になってしまった。どうすれば避難勧告を早めに出せるかということをぜひ議論してほしいという要望があったからです。私は、この会議に初めて参加したときに、避難勧告の発令が遅れなかったら、犠牲者が出なかったという考え方だと、将来の災害の防止には全然つながりませんよと言いました。きっと発言記録に残っていると思います。でも、そういう捉えられ方は全然一般的ではなく、避難勧告が遅れたためにということが一般的になります。全ての動きがそうなります。だから、結果として、8・20災害が起きた後は、避難勧告に相当するものはとにかく早く、そして、できるだけ広範囲に出すということに重点が置かれた発令が増えました。  私が言いたかったのは、真夜中のこの災害になった事象で、避難勧告が適切に出されるということは、真夜中に出すことだったのだろうかという問題提起なのです。あの日の雨が強まり始めた1時30分の時点、8・20災害発生の2時前後にはもう道はきっと川のようになっていたはずなのです。そういう直前に避難勧告が出されると、その当時の防災訓練というのは、みんなで集まって指定された避難所に向かって移動するということを繰り返してやっておられるので、無条件に避難所に向かって飛び出して、もしかしたら土石流あるいは濁流に巻き込まれたのではないかという気がして仕方がないのです。だから、本当の意味で避難勧告あるいは避難行動というものをもうちょっと考えないといけないというふうに思いました。  取りあえず、8・20災害で明らかになったこととして、こういうふうにまとめました。まず、真夜中の未曽有の降り方の集中豪雨の恐ろしさです。当時、気象台等からの雨の情報は、今後、1時間に40ミリの強い雨が降るところがあるかもしれません。あるいは、今後24時間の間に100ミリの雨が降るかもしれませんという予測でした。しかし、実際には1時間雨量の最大は130ミリです。そして、多くのところで3時間雨量が200ミリを超えるような降り方でした。こういうことは、予測だから、できなかっただけではなく、最新技術を使った今でもできません。  それから、危険なところであっても、まだ土砂災害警戒区域等の指定作業がなされていないようなところだったら、家は自由に建てられるという状況が残っていたこと。そして、実際にそういうふうに建てられている状況が進行していたこと。これが2番目です。  3番目は、ハザードマップ公開の本当の意味合いは、きちんと住民に伝わるようにするところまでやらないといけないということでした。避難指示等については、やはり災害発生前に発令されるべきというのは大事です。ここは変わりません。でも、避難行動は命を守るために行われるものということを考えると、命を守るためには、異常時に受け身の姿勢でいては間に合わない場合があるということを住民の方に知っておいてもらうことが何より重要です。危険性のあるところに住んでいる人には、危険性のあるところに住んでいるという意識を持ってもらって、避難指示等に頼らず、自発的に警戒避難行動をしてもらえる環境づくりをやっておくことが何より大事だということです。これがあった上で、さらに避難指示等が出せる環境というのが大事だと思ったわけです。  残念なことに、今から4年前の平成30年に西日本豪雨災害が起きます。しかも、南部で、資料の赤く塗ったところは、総雨量が600ミリを超えるという降り方でした。庄原市や三次市のほうでは、昭和47年災害のときに600ミリ前後の雨が降った経験があります。当時も大災害になっています。けれども、南部のほうでそのような雨が降ったことがなかったので、このときの災害はすごいことになります。この資料の右半分が呉市安浦町、前平山、虚空蔵山の辺りを結ぶ線ぐらいから左側が東広島市の黒瀬町の辺りです。無数に傷だらけになっている状況です。この資料は、右上が熊野町の川角地区です。12名の命が奪われた土石流が発生しました。山裾に家がいっぱいあります。左下は、坂町の小屋浦地区です。土石流が起きただけではなくて、この写真では見にくいのですが、人がたくさん住んでいるところに大量の土砂・洪水氾濫という状況が起きました。  平成30年7月豪雨による土砂災害の事例では、人的犠牲者が出た箇所の全てで、土砂災害警戒情報が事前に発表されておりました。これは全国的にです。防災を促す気象情報や避難指示等の情報もかなり早い段階から発令されていました。でも、広島県では適切な避難行動に結びついておらず、広島県だけで109人もの命が奪われました。関連死はその後、40人を超え、つまり、150人を超える命が奪われたということですが、さらに5人の方は今でも行方不明のままです。亡くなった方の中で、20人を超える人が避難の途中と思われる犠牲者です。  なぜ適切な避難行動につながらなかったのかという問題があるのですが、ここで冒頭にもお話ししました災害対策基本法、防災とはもともと3つの柱で、災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、及び災害の復旧を図ることを言います。これを私なりに解釈すると、1、災害が発生するよりも前の段階の未然防止のための防災、2、災害がまさに発生しているときの被害拡大防止・減災のための防災、3、災害が起きた後、被災した地域や人々が再び前向きになり、助かった命を大切にしながら、次の災害に備えられるようになるまで手助けをする、復旧・復興のための防災、この復旧という言葉までが法律です。でも、私はもう一つ、復興までを加えたいのです。なぜなら、助かった命であるのにもかかわらず、あのとき死んでしまったほうがよかったと言われる方の声を聞くときに、私はとても悲しい思いをします。これは私だけではなく、多くの人がそうです。せっかく助かった命を、それを生かしてもらえるようになったらいいのにと思うのですけれども、それは単に復旧だけでは駄目なのかもしれないと思って、私の解釈では復興という文字を加えています。住民の方に、助かった命を生かしてもらうためにも、まずは自分たちが住んでいる地域の状況を知ってもらって、私の家は危険度がより大きいから、隣の家の方が逃げていなくても、少しでも早めに逃げようという気持ちになってもらえるように、個々の家の状況を考えたマイ・タイムラインという取組を県が進めてくれています。これは物すごく大事なことで、こういうふうに進めることが大事だと私も思います。  ハード対策、ソフト対策の重要性は変わりません。ハード対策は、構造物を使った対策です。砂防堰堤や擁壁や流路工等、様々なものがあると思いますが、これはやはりすごく必要度が高くて、これがあったおかげで何とか助かったというところはたくさんあります。けれども、それだけではまだ駄目で、やはり下のソフト対策、これは命を守る行動につなげるためのいろいろな対策になります。ソフト対策の段階では、命を守ることに重点があって、もはや財産を守ることまではとても面倒を見ていられないということですが、ハード・ソフト対策が同時にうまく機能することを期待します。  この資料は、去年の8月豪雨のときに効果を発揮した、それぞれ違う地域の砂防堰堤の写真です。私自身が撮影したものと、国交省や県から提供していただいた写真などもありますけれども、本当に下流のほうにたくさんの人が住んでいるところです。住んでいる皆さんは御存じないかもしれませんが、頑張って施設が受け止めてくれています。でも、砂防対策というのは、基本的に100分の1の確率です。すなわち100年に1回の雨、そして、その雨で出てくる土砂の量とかを基本にして、ダムの設計でもやります。例えば、ハード対策だったら、100年に1回の土砂の出方、量を考え、構造、大きさを決めるということです。でも、先ほど8・20災害の事例を出したときに、500年に1回の雨よりもはるかに多い降り方をしていました。すると、土砂の出てくる量も多いのは当然です。こういう施設があったとしても、もしかしたら超えてくるかもしれないとか、また、何よりも土石流対応のダムが造られていたとしても、土石流の固体の部分は止めることができても、液体の部分は止められませんから、出てくるわけです。つまり、ダムの下流側にも激しい濁流の流れる道筋みたいなもの、これを流末処理と呼びますが、それがしっかり確保されているような対策というのが本当は大事なのですけれども、なかなか難しくて、できていないところも多いと思います。  もう一つ、ソフト対策も同じく、100分の1の確率降雨です。つまり、100年に1回の土砂量をインプット量にして、その土砂の移動の力や堆積の力に耐えられるかどうかでレッドゾーンの範囲を決めます。だけれども、それよりはるかにすごい雨の降り方をすると、出てくる土砂はそれより多いですから、レッドゾーン相当の場所の幅も長さももしかしたら大きめになるかもしれません。あるいは、レッドゾーンがなく、イエローゾーンしか描かれていないようなところにもレッドゾーン相当の破壊力が生まれるかもしれないといった危険性の見方というのを、ハザードマップの中で必ずしも書かれていなくても、認識できるように見方を説明する必要があります。また、資料の下にも書いたように、水は止められないから、水の中に混じる泥、砂、石ころとかはずっと下流まで来ます。土石流のハザードマップの一番緩いところは、2度相当の勾配で切ります。それより下には土砂混じりの水は流れても、土石流としては流れないからです。けれども、泥水の流れは下まで来ますということが伝えられる必要があると思っています。  広島県で防災のためのこれまでの取組というのは、1999年の6・29災害以降、ハザードマップを公開したり、ソフト関係で雨の情報を簡単に取り入れられるようにしたり、すごく発展してきていると思います。今、地上観測雨量は、広島県防災ウェブを通じて、400点以上の観測所のデータを10分ごとに誰でも簡単に見ることができる環境を備えてくれています。これは、47都道府県とかいろいろなところの情報の中には一切ありませんから、広島県の最大のすばらしさです。ただ、そういう情報があるけれども、どれだけの人が本当に活用してくれているかというのはちょっと怪しいと思っています。  さらには、いろいろな災害を経て、その都度いろいろな形でそれをいかにして住民に伝えて、きちんと避難行動につなげてもらえるようにするか、こういうところを進めているにもかかわらず、3、4年前の西日本豪雨のときには大勢の犠牲者が出てしまいました。何が足りないのでしょうか。  去年、東広島市河内町宇山の崖崩れで2名の方の命が奪われました。裏山の崖が崩れて、小さな規模ですが、1階部分に入り込んで、家そのものをちょっと押し出すような形になりました。残念ながら、2名の方の命が奪われ、その方の御遺体は1階で見つかりました。何で2階に逃げていなかったのだろうと思いましたけれども、お聞きすると、これまで、危ないときには2階に行っておられたという話でしたので、もしかしたら、この日も2階に行っていたのだけれども、崖崩れが起きた時間が明け方の6時だったのです。だから、そのときにたまたま下に下りてきていたのかなと思います。80代のお母さん、50代の息子さん、お二人が犠牲になりました。  つまり何が言いたいかというと、自然現象の規模としては小さい規模の崖崩れだけれども、結果として2人もの命を奪う大災害になっているわけです。やはり崖のそばに家があるということを認識する必要があると思います。また、ハザードマップでは、もちろん先ほどの場所はレッドゾーン相当でした。そして、崩れたときの雨というのは、一連の雨の後半に強く降っています。こういう形で崖が崩れたり、あるいは土石流等が発生したりする場合が多いのです。雨のパターンというものがあります。だらだら降っているだけではなくて、最後に引き金になる強い雨が来る。そういうときに弱い。だから、こういうことを認識しておくだけで大分違うかと思います。  そういう雨の降り方と土砂災害発生の関係を表にして、資料の左、これまでに降っている雨に対して、資料の右、さらに強い雨が加わったらという組合せを書いています。去年の8月は、実は総雨量でいうと、3年、4年前の西日本豪雨のときと同じように、600ミリを超えるようなすごい降り方をしたところがたくさんあったのです。ただ、3年、4年前には集中的にもう星の数ほど土石流や崩壊が起きましたけれども、去年はそうはなりませんでした。この典型的なところを出しました。資料の左上が去年の雨、右下が3年、4年前の雨です。すると、3年、4年前に土砂災害が集中発生したところは、後半にすごく、青の棒グラフで描いた雨の降り方の強い部分が来ています。そこが引き金になって、一斉に崩れました。左上を御覧になってもらうと、後半に強い雨の降り方をしているところがありません。ただ、だらだら降ったところが多かったです。だから、本当はもう崩れる一歩手前のぎりぎりの状態のところが広島県内にはたくさんありました。けれども、たまたま最後の引き金になるような降り方をしたところが少なかったのでほとんど土砂災害がなかったと言ってもいいぐらいです。辛うじてぎりぎりセーフだったところが多かったというのが去年でした。  災害の教訓を後世に伝えるための営みというのは、実はあちこちでなされているのです。これをもっとみんなに知ってもらって、お互いにこういうのを先祖から引き継いでいくことが大事だと思います。資料の左上が加計町の災害のときの絵図、左下がそのときの石碑、右が蛇王池伝説の石碑です。山本地区では、古老が若い人に向かって話すような、そういう言い伝えを大事にしていたときもあったのですが、もったいないことにこういうのが途絶えています。これも、8・20災害が起きた後に教えてもらいました。だから、体験談集を作ったりして、今はこれをいつでも誰でも見てもらえるように、広島県防災ウェブの中に「地域の砂防情報アーカイブ」のページを作っていただいているので、本屋で買うことができないけれども、ここをのぞいてもらうと、冊子丸ごとただでダウンロードできるのです。それを読んでもらったら、物すごい、もう心が震えるような、そういう気持ちが分かります。そしてそのような教訓は生きると思うのです、こういうのを推奨したいと思います。  その中で、土石流災害の前兆現象というのは、土石流が今まさに自分のところに飛び込んできて、被害を出して、土石流が災害に変わる。その直前の状態には、水の臭いがひどくなる、石がぶつかりながら流れる大きな音がする、木の根を洗うような異様な臭いがする、豪雨にもかかわらず、川の水が少なくなる。これは、何か崩れて、せき止められているのです。そうすると、がらがらごろごろ流れていた石の流れる音が聞こえなくなるので、いっときの間は静かになります。でも、それが破られると、すごい土石流が接近してきます。迫ってくるような、体に響くような地響きや轟音がするとか、このような状態はもう一刻の猶予もないため、その流れの場から離れることです。  また、がけ崩れ災害の前兆現象は、自分のいる場所で被害が起きるかもしれない直前、ひび割れができる、崖がはらみ出す、湧き水が濁る、水が圧力を持って噴き出してくる、小石がぱらぱらっと崩れた後、がさっと崩れるのがユーチューブにたくさん載っています。だから、こういうことが起きているか見に行くようなことは絶対推奨できません。だけれども、もし気がついたら、崖崩れ災害の場合は、崖から離れることです。土石流災害の場合は、土石流の流路になるようなところから離れることです。離れる方向は違うかもしれませんが、そういうふうに生かすことが大事です。  広島県の土砂災害の最も大切な観点は、全国的に見た場合に、自然現象としての土砂移動現象の規模は決して大きくはないのです。崖崩れや土石流等も、どちらかというと小規模か中規模です。でも、これが原因となって、結果としての災害の規模は突出して大きな規模になっているのです。西日本豪雨のときを見たら、よく分かります。三、四年前のとき、全国で270人ほどの死者が出ています。けれども、そのうちの150人ぐらいは広島県の死者です。何で過半数の死者が広島県で出るのかということになるのですけれども、まさにこのことなのです。ちょっとした雨でも崩壊や土石流等が起きやすい自然的な特性があるのは誰もが認めていますが、これは原因の一つではあっても、これが全てではありません。最も大きな原因は、その後の小規模な土砂移動であっても、命が簡単に奪われてしまうような居住の在り方にあると思っています。家1軒違うだけで、起きる状況は全く違うというのが土砂災害の起き方の特徴です。住民が身の回りの環境を知り、正しく状況を把握し、適切に命を守る行動が取れるようにふだんから働きかけることの大切さというのは、まさにマイ・タイムラインの取組の重要なところです。これはもう県が頑張ってやってくれているし、またマイ・タイムラインと付随して、いろいろな形で土砂災害防止のための出前授業とかをいろいろなところがやってくれています。県の砂防課あるいは林務の関係、それからOBも含めて、砂防ボランティアの方とかもやってくれています。  もう一つ、私が個人的に非常に残念に思うのは、私は「砂防学」をやっていました。私が35年、前任者が11年ほどやってくれていたので、合わせて四十数年、広島大学総合科学部で「砂防学」の講義だけではなくて、研究をやりたいという学生を受け入れて、卒論、修論とかを見て、そして、砂防の専門家として世に送り出すということをやっていました。でも、今、その研究室の維持ができなくなってしまいました。本当はそういう意味で、専門的な知識、あるいは、きちんとそれを防災のリーダーとかに伝えられるような人材育成がしたいのですけれども、できる環境がもうなくなってきました。私は去年の3月に定年で辞めましたので、今は特任教授で防災・減災研究センターのセンター長をやっていますが、学生を指導する権利を今は持っていません。常勤の専門の先生が本当は欲しいところですが、大学でそういう人事を簡単にやってもらえる余裕がないということで、今、苦しい思いをしています。できれば、そういう人材育成ができる場をどこかで維持してほしいと思っています。大学での「砂防学」研究、教育の必要性をすごく感じているところです。  自然災害の犠牲者が多くなる場合の典型というのは、原因となる自然現象について知らなかったとき、情報が伝えられなかったとき、活用されなかったとき、危険な状況を回避する手段がなかったとき、安全だと思っていた場面で異常事態が生じたとき、過信、慢心、諦めがあるときです。諦めたら、もう本当にどうしようもありません。けれども、何としても生きたいと、土石流あるいは濁流にもまれながらも、そこから脱出してこられた方はいます。庄原災害のときに、老夫婦が2人ともばらばらに流されたのですけれども、どちらも必死にそこから出てきて、助かりました。私はその2人と庄原災害の調査のときに時々お会いしたのですが、もう本当にすばらしいです。だから、諦めたら駄目です。こういう犠牲者が多くなる場合の典型を克服するためには、体験することが大事ですが、体験したら、その地域は確実にもう次の災害に遭いたくないから、一生懸命防災の取組をします。けれども、みんなが体験することはとてもできないので、体験談を見聞きすることも大事です。また、情報の伝達網の整備、収集する習慣づけ、収集した情報の意味を知り、活用する練習、これはとても大事です。異常事態の想定に基づく防災訓練、安全度の前提条件は日々劣化していくので、それを定期的にチェックすることも大事です。何より大事なのは、何としても生きたいという気持ちを持ち続けられるように、あるいは早めに命を守れるようにしようという考え方に結びつくように、日頃、生きがい、幸せを感じられるような生き方を維持できているかです。そうしたら、この幸せを壊したくないとか、家族、孫、近所の人、あるいはおじいちゃん、おばあちゃんとの関係、こういうものを大事にしようという気持ちになれればなれるほど、早めに、避難しておこうかとなると思うので、そういうものが大事だと思っています。  最後にまとめです。自然災害及び防災の定義として、私としては、自然災害は自然現象そのものではありません。自然現象が人間の生活、活動の場に及んで、何らかの被害を発生させて初めて自然災害となるのだということ。だから、自然災害の規模は自然現象の規模と必ずしも比例するものではありません。自然現象を前に、人がどのように対応するかによって、結果としての災害の規模は大きくもなるし、小さく抑えることもできます。防災とは、自然現象そのものをなくすことではなく、それが大きな災害につながらないようにすることです。命を守る行為で、災害の前、災害が起きている最中、災害が起きた後の復旧・復興までを含んだものにしたい。砂防、土砂災害防止関係の場合は、今の「自然災害」の部分を「土砂災害」に、「自然現象」の部分を土石流等の「土砂移動現象」に置き換えたら成り立ちます。日頃から自然に親しむことで、異常なときに、これはふだんと違うぞと、いち早く感じ取れるような生活ができるようだったら、きっと豊かな生き方につながるのだろうと思います。だからこそ、防災に特化しないで、もっと何か普通の楽しみの中に自然や身の回りの環境と親しむ場、あるいは近所付き合いといったものが入ってくるような環境づくりが望まれます。結果として、これが防災にもつながるといつも思っています。  以上です。ありがとうございました。  (4) 意見交換 2: ◯柿本委員 海堀先生、ありがとうございました。  私も防災士の資格を取って3年目になりますし、海堀先生の様々な研究発表はいろいろな防災士からも伺っていますし、私もいろいろ拝見させていただいております。本日も貴重な御講義、ありがとうございました。  その中で、2点ほどお伺いさせてください。  1点目は、今のコロナの情勢に特化した全体のお話です。海堀先生は砂防の専門家ですが、地震等での避難において、例えば、熊本地震の場合は、実は避難された方の6割が車で避難されていたというデータがございます。そして、現在、コロナ禍でありますので、皆さんにそれぞれ知人宅、避難所、ホテルなど、いろいろな安全な場所に分散避難していただくことを県などの行政も言わせていただいており、早期に避難するように促しています。  そういった中で、我々の地域の防災士仲間も、プライバシーやコロナ禍の影響もあって車中泊で避難をされる方が増えるのではないか、また、そういった備えもやっていかなければいけないのではないかと危惧しています。今後、車中泊等がトレンドで増えてくる中で、行政としても駐車場や商業センターの敷地をそういった避難できるような場所につくっていくと思うのですが、今後の避難の在り方のトレンドに対して、海堀先生の御意見をお聞かせください。また、今まで避難所においては、そこに来られた方や地域、行政の方が携わって、エコノミー症候群などを未然に防止するのですが、その中で、仮に車中泊できる場所が増えて、そういった商業施設や大きなところに集中して避難した場合には、そういったことに対して、なかなか目がかけられないことも危惧されています。そういったことへのアプローチとか、何か行政にアドバイスするようなことがあれば、教えていただければと思います。 3: ◯海堀参考人 御質問ありがとうございます。  今、コロナで、やはり密集、密接とかを避けることの大事さが叫ばれているので、分散避難もすごく大事だということはみんなが分かってきていると思います。でも、指定された避難所が遠方にあり過ぎて、実際になかなか避難してもらえないとか、それよりも道中で犠牲になる方も出てきた状況もあるので、指定された避難所だけに頼るのではなく、身近なところとかも含めて、いろいろなところに避難ができるようにあらかじめ用意しておく必要があります。そういう意味で、感染症が出るよりも前の段階から、多くの命を守るために一時的であっても避難できるようなところをつくるようにしましょうという形の声は増えてきておりました。防災・減災研究センターができたときも、たまたまですけれども、そういう形のことをトピックにしたイベントもやったりしていて、その次の年ぐらいからコロナが出てきました。もちろん避難所の環境の問題とかは昔からあったのです。避難所に行くと、どうしても環境がもう一つよくなく、体に不自由がある方などは何らかの施設のような形でないと、とてもそこでは生活できないから、そういう方々のことも考えた対応が要るということを考えられていました。その中でコロナが出てきてからは、当然のことですが、感染症対策の面からも、換気、あるいは、あまり集団にならないようにする意味の分散避難がすごく増えました。今、質問していただいたように、車の中だったら、少なくともプライベートな空間を維持できるし、他の人との接触も減らすことができます。結果としても、増えてきています。しかし、エコノミー症候群のような形で、うっかりすると、命をなくしてしまうようなことまで出てきました。だから、個人的には、避難をする場を増やしておくという方向性は、これはもう間違いなくコロナの前からありましたので、その中で、プライバシーの問題を考えたりするときに、車の問題もあるのは、これも間違いありません。エコノミー症候群の特徴というのは、飛行機などでもそうですけれども、あまり動けない状態でずっといるときの問題が多いですから、少なくとも体を動かすことを定期的にやってもらえるような働きかけをしつつ、そういう車がたくさん止められるようなスペースを確保していくと同時に、水不足になりやすいから、飲み水やトイレとかをきちんと利用しやすいような場、情報をつくって、伝えられるようにするといったことをやっていくことが必要です。いわゆるエコノミー症候群に相当するようなものは、飛行機の中だったら、なかなか運動することはできないけれども、車の止めてある周辺だったら、できるかもしれないので、そういうものはつくっていくことが必要だと思います。  ただ、そうは言っても私は専門家ではありません。防災・減災研究センターでは現在、広島大学病院や医学部の先生とか、いろいろな方に協力してもらって、そういうやり取りもしているので、ちょっと今言っただけです。つまり、そういう専門家の方の声を取り入れる環境が大事だと思います。ハード的に何か場所を設けるだけでは具合が悪いというのは、まさにそのとおりで、そこに助言をしてもらえるような対応が必要です。近頃は福祉関係の方も一緒になった避難所の運営といったことを考えつつあると思うので、非常に単純で申し訳ないのですが、そういう方の意見や考え方が生きるような取組を交えて、場所を増やしていくことができたらいいと思います。少しでも命を守る行動を取る気になるようなところに、そういう場所が設けられることが何より大事だと思うので、そういう意味では、もし行政のほうで積極的に設けられる場所が増えてきたら、それだけでもすごいプラスになると思っていますので、どうかよろしくお願いします。 4: ◯伊藤委員 本日は貴重な御意見、御説明をいただきまして、ありがとうございました。私は、西日本豪雨災害で甚大な被害を受けました安芸郡選出の伊藤と申します。  海堀先生には、先ほど、40年余りということでしたが、長きにわたり、この広島県の防災研究に様々な角度から御尽力を賜りまして、県民の命を守るということに本当に大きく寄与していただいていると思います。この場をお借りして感謝を申し上げたいと思っております。  今日、先生のお話を伺って、土砂災害をはじめとした自然災害においては、その現象そのものの規模や外力の条件というものだけではなく、被害を受ける側である社会の計画性が大きく関係することがよく理解できました。そのため、ハード整備による外力の抑制だけではなくて、住まい方の工夫、避難体制の充実など、ソフト対策により、社会全体や住民個々の防災力を高めていくことが大変重要であると改めて認識させられました。  そこで、広島県において、災害犠牲者を少なくするためには、先ほどマイ・タイムラインの取組の強化や災害体験に触れること、情報伝達網の整備などが重要とのお話をいただきましたが、いざというときの行動につなげるために、先生がより効果的と思われる具体的な取組がありましたら、御教示いただけたら幸いです。よろしくお願いします。 5: ◯海堀参考人 質問ありがとうございます。  いざというときに、どういう取組をするのかというと、行政側からという意味の取組と、それから、実はいざというときの前の段階で、住民の方々にいざというときにはこういう行動をするというのがもう周知できていて、そういう練習もできていた場合の住民の立場でのいざというときの取組という、2つあると思うのです。いざというときの行動で、一番言われているのは、例えば、声かけです。命を守る行動を取ることさえできれば、仮に土石流が居住エリアを襲ってきたとしても、建物は守ることはできないかもしれませんが、命を守ることはできます。そういうふうに命を守るためには、建物が壊されるようなところにいては、命を奪われるわけだから、そこから命を守れる場所に移動するという避難行動につなげることができる環境が必要となります。今までの災害のときのいろいろなアンケートで、あなたはどうして避難しなかったのですかと聞くと、避難しなかった例として、周りの家の人がまだ避難していなかったからという言い方をされます。では、あなたはどうして避難したのですかと聞くと、消防団の人に声をかけてもらったから避難したとか、娘がもう避難しようと言うから、仕方がないから避難したとか、例えばこういうふうに、人からちょっと背中を押してもらうような形で避難行動につなげたという例が非常に多く、実は広島県の災害のときにもそうだったし、それ以外の全国的に実施されているアンケートでも、みんな共通なのです。すなわち、いざというときに一歩踏み出して避難行動につなげるための、この一歩につなげられる環境づくりが、やはりすごく大事と思っています。  実はマイ・タイムラインは、自分の家の置かれている位置がどういうところにあって、そこの危険性は実は1軒隣の家とも全然違うことを伝えています。私のところは非常に危険度が高いところなのだと認識することができれば、隣の家の人は、避難していないけれども、私のところは隣よりも早いときにもう危険度が迫ってくるのだから、ちょっと避難しておこうかと。でも、避難する途中に、ついでに、隣にも声をかけておこうかと。そうしたら、あなたが避難するのだったら、私も避難しておこうということにつながるかもしれません。こういう形で地域で声をかけられるような環境をつくっておくこともすごく大事なことです。だから、そういう環境がつくられるように、行政側もちょっと働きかけをする。例えば県のマイ・タイムラインの取組の中に、それぞれの地域に行って声かけ等が普及するように働きかけたり、砂防ボランティアや砂防課の方が出前講座で、土砂災害が起きたら、こういうふうになってしまうので、そういうところは近くにないか見ておいてという話をしておくとか、いざというときにうまく生かすためには、ふだんどれだけ準備ができているか、ここに尽きるような気がするのです。だから、そういう予習みたいな段階がなかったら、例えばよくあるのは、前兆現象に相当するものを先ほど紹介しましたが、災害の直後にそれについて聞いたら、いや、前兆現象はなかったかなと言うけれども、体験談に書いてある文章を見たら、たくさん前兆現象に相当することにきちんと気がついているのです。ただ、これが自分のところに何かが襲ってくる前兆と認識ができなかっただけなのです。つまり、事前にそういうことが認識できていたら、危険度が、本当に切迫するよりももうちょっと早い段階で、楽に避難ができるとか、そういう準備の段階がしっかりできていることが、いざというときの行動につなげる秘訣だと思います。そういう意味では、いざというときになってから大慌てでやろうとしても、なかなかできないと思います。日頃からそういう活動を既にやっていただいており、ありがたく思っていますが、それをもっと広めることです。非常に残念ですが、広島県は土砂災害を繰り返しているから、経験した地域はたくさんあります。経験して、一生懸命そういう自主防災活動とかをされている地域はたくさんあります。そういう活動をどうしてやっているかも含めて、活動を横に広げていくこと、そして、日頃から準備できているということが、いざというときに命を守る行動にスムーズにつなげる秘訣ではないかと私は思うのです。きちんとした答えになっていないのですけれども、いざというときに大慌てで何もかも全部やろうと思っても、きっとそう簡単にはいかないような気がするのです。申し訳ないですが、そこが今の私に答えられるぎりぎりのところです。 6: ◯伊藤委員 先生のお話を伺っていたら、いざというときのためには、平時からの行動が大切だということで、私の地域でもしていますし、先週でしたか、命は落とさなかったのですけれども、町中が洪水になってしまった府中町で、実は昔あったという、地域住民がまちと協力してつくられた1冊の本をちょうど見せていただいたところなので、災害が起こっても、きちんと後世に伝える準備をされているのだと思ったところです。  あと、その中で、やはり平時に備えておくという意味では、子供から言われると、大人はすぐに逃げたりしますので、小中学校での防災の教育が大事かと思っております。私も災害があった地域ということを教訓に、地域のためにこれからもしっかり取り組んでまいりたいと思います。本日はありがとうございました。 7: ◯下森委員 なかなか海堀先生に質問できることもないので、ちょっとお時間をいただきたいと思います。  私の考え方がおかしいか、いや、あなたの言うとおりだ、その2つの答えだけ頂きたいのです。私は、数年前に知事にこのようなことをただしました。先ほど先生がおっしゃった土砂災害危険箇所が3万1,000か所、あるいは、土砂災害警戒区域が4万7,000か所、これは全国で一番多いから、広島県へ住もうという人がいるはずがないだろうと。それ以前に、災害が起きてからハード事業をしても意味がないのだと。危ないところを先にしないといけないのだから、予算を確保してくれと知事にお願いしたのです。思い起こせば十数年前、特にアジア大会があった平成6年ぐらいの広島県はピークで、1年間の一般会計予算が約1兆円あったのですが、三千数億円が公共投資のいわゆる普通建設事業費だったのです。予算の3分の1ぐらい確保していたのですが、今はもう1,000億円を割っている状況です。それで、蓋を開けてみれば、平成26年、あるいは平成30年にあのような災害が起きました。先ほども言ったように、起きてからでは遅い。起きる前にきっちり、ソフト事業も大切かもしれないが、ハード事業をしなくてはならないというのが私の考えなのです。  それから、当局の土木担当は、一生懸命予算を組んでいただいて、例えば、端的に言ったら、川の堆積土などは、あの当時は銭がないと言って、全然取っていなかったのです。今は堆積土除去計画をつくって計画的に実施しているから、去年の8月、あるいは9月に災害が起きたときも、オーバーフローする川は少なかったのです。そのとき初めて県民の皆さんから、あのときに砂防堰堤を造っておいてくれたから、私たちは助かったとか、川の中にあった土を取ってくれていたから、床上、床下浸水にならなかったとか、感謝の気持ちを物すごく聞いたのです。それで、何が言いたいかというと、昔のような3,000億円とまでは言いませんが、危険箇所が分かっているのだから、やはり災害が起きるまでに、きちっとまとまった国土強靱化、県土強靱化を基に予算を確保するべきではないのかというのが私の考えなのですが、先生はそこのところを一県民としてどのように肌で感じておられるのか、お伺いしたいと思います。 8: ◯海堀参考人 ありがとうございます。  砂防堰堤があったおかげで、ここの地区は守られた。その隣で砂防堰堤等の整備ができていなくて、被害を被ったというのは、これまでの災害でも繰り返し起きています。やはりそういう地区の近くにおられる方は、砂防ダム等があるところはいいな、守られているなと感じます。例えば、そういうオーバーフローをしたとしても、かなりの土砂を止めたりすることで、破壊する部分は常に縮小されるという意味も、対策の効果の一つとして見たときに分かりました。本当は、今、委員がおっしゃってくれたように、災害の発生する前にできたら、これはもうすばらしいことで、そのとおりなのです。けれども、例えば、砂防堰堤1基を造るのに数億円かかるとか、そして、年間どれぐらいできているのかというと、災害後の補助金が出ていても100基いくかどうかぐらいで、ふだんだったら、数十基ぐらいだと思います。しかし、土石流の危険にさらされているところが1万何千か所あるとして、割り算すると、例えば、非常に多く計算して、1年間に100か所できるとしても、100年かかって1万か所です。だから、1個の砂防堰堤をつくるにしても150年とかかかる計算になります。結局、本当に必要にもかかわらず、まだ着工できていないところは多いのです。広島県の場合で、その砂防堰堤や崖崩れ対策とかも含めてだと思うのですけれども、整備率で3割ぐらいと言われていると思います。だから、残り70%前後が、本当はあったほうがいいのだけれども、まだそこまでできていない。ところが、全国的に見た場合には、これがもうちょっと少なく、二十何%だと思います。つまり、国の予算全体から考えて、本当に必要にもかかわらず、まだできていないところというのは物すごい数があるということを考えると、残念なことですけれども、本当は、今言われたとおり、予防的にやっていたらいいのにと思うところはいっぱいあるのですけれども、できない現状があるという気もいたします。だから今は、結局、後追い的に、災害後に一生懸命同じような規模の土石流等が起きても耐えられるように対策を立てます。できることなら事前にという考えは、本当に私も同感なのですけれども、なかなか難しいだろうと思っています。  一方で、砂防ダムを造って、満杯になったらおしまいだという考え方をされる人も大勢いますが、本当は満杯になっているときに初めて威力を発揮している最中の砂防ダムもいっぱいあります。特に古い、昔から造ってきた砂防ダムというのは、空っぽの状態にして、土石流が直撃して耐えられるものばかりではありません。山の中のほうに造られているダムなどは、実は満杯になって土砂がたまっている土圧で横から崩れてくるのを抑える効果を発揮させていたりとか、あるいは、渓床が一様に急勾配なところに、階段状にダムを造ることで、一段一段超えるごとに土石流のエネルギーが少しずつ減っていくことを期待して造られているものとかもあるわけです。だから、全国的にも、全ての必要なところに、そういう整備ができている状態ではない。それと比べて、広島県の場合は遅れているわけではなくて、むしろそれよりは多いほうなので、さらに事前にもっとというのができるのかなと若干そういう気はするのです。予算が物すごくついても、今度は、工事ができる人とか、それを指揮する人が足りないこともあると思います。だから、そこら辺を含めて、私の見ている範囲ではそのような気がするということで、実際のところは県の担当者のお話を伺わなければいけないのですけれども、そのような感じです。私も、事前にそういう対策もしっかりやってもらえたらと思います。  典型例を一つ出すと、去年の8月の災害のときに、広島市安佐南区山本地区の上のほうに大きな団地があります。春日野の団地を造成している段階から、あの谷の出口のところに堰堤をずっと造っていました。これはすばらしいことで、今回、その堰堤のおかげで、上から来た土石流等が見事に止まっているところが何か所かありました。でも、住んでいる人は気がついていないと思います。また、団地の左側、西山本川と、右側、東山本川、両方とも土石流が起きています。なぜなら、祇園山本観測所というのがその団地の下のほうにあるのですけれども、そこの観測雨量が一番多かったのです。だから、本当はたくさん雨が降っていたのです。最後の引き金になる強い雨は降っていませんでしたから、無数の崩壊土石流が起きるところまでいかずに済んだというのもありますけれども、そういうふうに堰堤とかがあったおかげで助かっているところはたくさんありますので、まさに今言っていただいたとおり、あったからよかったというものもあります。だから、そういう意味では、応援していただいた気がします。ありがとうございます。    休憩 午後2時59分    再開 午後3時8分  (5) 当局説明   1) 健康危機管理課長が報告事項(1)について、別紙資料1により説明した。   2) 医療機能強化担当課長が報告事項(2)について、別紙資料2により説明した。   3) 畜産課長が報告事項(3)について、別紙資料3により説明した。   4) ため池・農地防災担当課長が報告事項(4)について、別紙資料4により説明した。   5) 技術企画課長が報告事項(5)について、別紙資料5により説明した。   6) 水道整備担当監が報告事項(6)について、別紙資料6により説明した。  (6) 質疑・応答 9: ◯質疑柿本委員) 私から、まず、公共事業のDX化についてお伺いします。  公共事業のDX化は、建設人材の不足ということで、るる進められていると思っていますが、この公共事業のDX化はポイント制になっていまして、年間10~20件ぐらいやっているということは過去に伺ったことがありますが、私は、とりわけ、この災害復旧箇所のDX化を進めていくべきではないかと思っています。以前視察で長崎大学へ行ったときに、大学と民間企業が連携していて、例えば、災害箇所の測量とかは、もうGPSを置くとある程度すぐに測れるのです。このたびの令和3年7月、8月豪雨の際の査定で使うのがベストなのか、設計のときに使うのがベストなのか、私も専門的なことは分かりませんが、いわゆる建設人材が不足する中で、このようなことをどのように改善しようと県が執り行っているのか。まだ進んでいないのであれば、しっかり国に対して、様式をもっと変更するなり、申請を変更するなり、求めていくことが必要だと思っていますが、そこら辺について伺います。 10: ◯答弁技術企画課長) 御質問の災害査定、災害復旧に係るデジタル技術の活用といった観点でございます。現在、土木建築局におきましては、令和2年度から各建設事務所にドローンを試行的に導入してございます。こういったドローンを活用して、被災箇所の把握などを行っております。また、昨年度の災害でも活用したのですけれども、災害査定におきまして、こちらの測量を設計コンサルタントが行うわけですけれども、ドローンを活用して平面図等を作成してございます。この作成図面を活用して災害査定を受けていくといったことを行ってございまして、これらのドローンで作成した図面の活用については多数実績がございます。  また、今後の取組として、被災直後に航空写真や三次元データといったものを活用して、現地調査でありますとか、測量といったものを構築化する仕組みの構築にも取り組んでいきたいと考えてございます。 11: ◯要望質疑柿本委員) 先ほどもありましたけれども、ドローンの活用や平面図の作成等にそういったDXを使うことをもっと進めていただければと思いますし、一方で、このポイント制は小さい事業所にはなかなか使い勝手が悪いということも聞いていますので、そこら辺は大手追随になるかもしれませんけれども、ある程度バックグラウンドをつくっておきながら、県としてそういった小さい事業所も活用できるような仕組みづくりをぜひ進めていただきたいと思います。     続いて、危機管理についてお伺いさせていただきます。  1月22日に大分県で地震が発生しました。夜中の1時8分ということでありました。振り返れば、過去、27年前、1月17日の阪神・淡路大震災も5時46分に地震が発生しています。要は、何が言いたいかというと、先ほど海堀先生は、大雨による土砂とか災害を想定されていましたが、やはりいつ起きるか分からない地震については、平時の時間ではなくて、皆さんがなかなか活動していない時間に発生することもしっかり想定しなければいけないと思っております。実際、1月22日1時8分にアラームが鳴って、広島県も久々に震度4と、多分お家が揺れた方も多いと思いますが、そのとき、県としての危機防災の機能はどの程度機能していたのでしょうか。また、その連絡体制や、そういったところに少し欠けていた部分があったとか、こういったところに課題があるのではないかとか、これは防災訓練だけではできないことなので、こういった実体験を基に検証する必要があります。  そこで、県として今後起き得る南海トラフに備えた体制について、どういったことを評価して、また、次に生かそうとしているのか。そこら辺についてお伺いしたいと思います。 12: ◯答弁危機管理課長) 1月22日に発生した日向灘を震源とする地震では、本県でも府中町で震度4を観測したことから、直ちに注意体制に移行しまして、危機管理監並びに各局関係課の所定の職員が速やかに登庁いたしまして、災害対応に当たったところでございます。危機管理監においては、県警や県内消防に対して被害の有無について随時確認を行いまして、また、各局関係課におきましても、被害情報の収集や所管施設の被害の有無の確認などの対応に当たったところでございます。その後、夜が明けまして、被害がないことを最終的に確認した上で、このたびは午前8時30分に注意体制を解除しております。  今回は、幸い、県内での被害はございませんでしたが、委員御指摘のとおり、地震は時間も問いませんし、突発的に発生するものでございます。こうした事態に対応するために、本県では地震発生後に直ちに防災体制が取れるように、1時間以内に登庁配備可能な参集要員の指定、自動収集名簿の整備などにより、地震発生時の初動体制を確保するとともに、大規模地震を想定した初動参集訓練などを毎年度実施して、防災体制の実効性の向上を図っているところでございます。  今後の地震につきまして、平時からの備え、そして、体制強化を図りまして、万が一、大規模地震が発生した際にも、県民の生命、財産への影響を最小限にとどめるよう、適切な危機管理体制を確保してまいりたいと考えております。 13: ◯要望質疑柿本委員) このたびは震度4ということで、大きな被災箇所はなかったと御説明ありましたが、ぜひお願いしたいのは、これが仮にもう少し大きい震度5であって、被災していた場合に、自治体との連携、そして、自治体と地域との連携について、先ほどの避難場所の開設も含めて、連携はどうだったのかということをぜひ自治体も含めて一度検証していただきたいと思います。逆に、自治体のほうは、県が来なかったので、そこまで動いていなかったということもあると思うので、そこで目詰まりがないか、改めてどこかのタイミングで御検証いただければと思っています。  先ほども海堀先生のお話でありました、やはり慣れとか、そういったものによって、少し危機管理を怠るということもあります。事業所でもBCPを作成してもらっており、県でも当然、連絡体制の整備とか緊急連絡訓練をやられておりますけれども、それに慣れてしまって、実際には登庁できないということもやはりあると思っております。ぜひ、最悪のことを想定した検証等、そして、振り返りをしていただくことを要望しておきたいと思います。  あと、私もよく防災の方にお願いしますし、私たちの地域でも課題だと思っていますが、防災では、例えば、マイ・タイムラインをつくったり、告知物をつくったり、広島県の防災ウェブを作ったり、いろいろなことをやっておりますけれども、やって終わりではなくて、やはり本当に県民、市民の方にこれらがどのように浸透しているのかが一番重要だと思っています。私たちの地域も防災マップをつくって、各町内の方に配っていますが、防災マップって何なのということもよく言われます。  そこで、地域としてどのように浸透させていけばいいのか。そして、行政としてこれらをより浸透させる取組は何なのか、分かれば教えていただきたいと思います。  もう一つは、指標をはかるには、アンケート等でどのような対応をしているかといった形しかないのかもしれませんけれども、危機管理として、どのような取組でこの浸透が進んできたことを把握していこうと考えておられるのか、その2点についてお伺いいたします。 14: ◯答弁(みんなで減災推進課長) 御質問の件でございますけれども、私どもで毎年、2月から3月にかけまして県民意識調査をやっておりまして、この中で、我々が取り組んでおります「みんなで減災」県民総ぐるみ運動の取組がどのように浸透しているかを明らかにしているところでございます。 15: ◯意見柿本委員) 意識調査で浸透度合いをはかるということですが、せっかく県としても、地域としてもやっていることが、なかなか自分事化されないというのが、やはり私も防災の一番のところだと思っていますので、引き続き地域、そして行政が連携しながら浸透を図ること、そして、その進捗度合いを高めるためには、何が必要で、どういったアプローチがいいのか等々につきましても、ぜひ連携してやらせていただければと思います。 16: ◯質疑西本委員) それでは、備蓄物資の有効活用についてお伺いしたいと思います。  これについては、これまでも取組を進めてこられたと思います。そういった中で、避難の分散化にも関わりますけれども、とりわけ流通備蓄の在り方について、どのような考え方、方針で整備をしていこうとしているのか、ここをまずお聞きしたいと思います。 17: ◯答弁健康危機管理課長) 資料番号1の本文の9ページによるところでもございますけれども、今後の方針といたしまして、(3)多様な調達先の確保ということで、流通備蓄協定及び災害応援協定を活用した備蓄の推進に努めているところでございまして、この協定先の状況等を把握してまいりたいと考えております。 18: ◯質疑西本委員) 災害時の備蓄について、どのように正しく、しっかりと管理していくかというところは、やはりこれまで随分と議論されてきたと思います。少し具体的にお聞きしますが、この流通備蓄、物資について、中山間地域、例えば過疎化しているような地域に対して、もし災害があったら、どのように物資を供給していくのか、お聞きしたいと思います。 19: ◯答弁健康危機管理課長) 先ほどの説明でも申し上げましたけれども、今般、物資調達・輸送調整等システムというのが国で整備されておりまして、令和2年度から運用が開始されております。このシステムでは、避難所の状況管理、調達輸送状況管理などが行われることとなっておりまして、物資の支援の要請、在庫管理、生産支援などの機能を活用して、適正に運用を行っております。 20: ◯質疑西本委員) 適正に運用するというのは、当然のことなのですけれども、中山間地域や過疎地域のこと、それから、なぜ流通備蓄というふうにお聞きしているかと言えば、本当に災害が発生して、道路が寸断された場合、そこに物資が搬送できるか、そこら辺をしっかりと把握して、計画が立てられているかが重要だからです。そのことに基づいて方針が整備されているかということをお聞きしておりますので、そこがしっかりと明示されているのか、お聞きいたします。 21: ◯答弁健康危機管理課長) このシステムでは、各市町の備蓄状況について、システムを随時更新できるかが重要になってきていると思います。災害時に適切に運用できるように、これからの訓練が重要だと考えております。 22: ◯要望質疑西本委員) 災害復旧、復興に関しては、人口が多い中央部が優先して直されるというようなこともあります。そういった中で、本当に全体最適という意味で、過疎地域であれ、中山間地域であれ、災害が発生しても、そこに備蓄がある。もしくは、備蓄がないときには、近くの備蓄倉庫から本当に備蓄が運ばれるかというところの検証も行いながら、整備計画をしっかり整えてほしいと思います。これまでの災害を見てみると、そうは言いながらも、備品とか備蓄品を運ぼうとしても、なかなか運べないということが実態としてあります。災害が起きてからというのも分かりますけれども、事前にそういったところをシミュレーションしながら、備蓄をしっかりと分散化したり、搬送したりできるように、しっかりと災害対応を整えていただきたいと思います。  それから、もう1点、備蓄物資を有効活用するとなっており、例えば、福祉施設や学校等に譲与するとあります。譲与することそのものは別にいいのですが、資料には、適切な時期にというふうにあります。
     そこで、備蓄物資が本当に適切な時期に渡されて、廃棄されることなく使用されているのか。そういったところをフォローされているのか。そのフォロー体制を含めて、どのようになっているのか、お聞かせください。 23: ◯答弁健康危機管理課長) 無償譲与に当たりましては、譲与対象品の量に応じまして、庁内関係課、市町、各市町の社会福祉協議会及びNPOの代表団体等に幅広く声をかけまして、希望のあったところを選定して配付しております。今後は、無償譲与の前に、概略を検討した上で無償譲与を行っていくことにしておりまして、その手続等に必要な期間として、食料品についていうと、おおむね4か月前を対象にして行っていきたいと思っております。  また、譲与後のフォローにつきましては、現在、特段のフォローといったようなことはしておりませんけれども、今後、譲与先の意見などをお聞きして、どういったフォローが必要か、検討してまいりたいと考えております。 24: ◯要望西本委員) 企業等においてもやはり備蓄というものがあって、その使い方は、食料品に関しては、年に1回、その備蓄を食べるようにして、防災意識を高めながら、また、次の備蓄をするといったやり方をしております。一方で、今の話の中で、譲与したときには、その目的があって譲与していただいていると思いますけれども、やはりそれが正しく使われるかということと、ただ渡すのではなくて、そのことによって防災意識を高めるとか、やはり貴重な備蓄でありますので、その辺もしっかりとフォローしながら、大切に使っていただきたいということをお願いして終わります。 25: ◯質疑(下西委員) 私からは、同様に災害応急救助物資につきまして、ちょっと細かくなりますけれども、1点お尋ねさせていただきたいと思います。  救助物資の備蓄品の中には簡易トイレがございまして、災害時に上下水道の破損等によってトイレの使用が困難になることも見込まれて、一定量の簡易トイレを備蓄しておくことは非常に重要であると思っております。この簡易トイレについて、障害のある方に配慮したオストメイト用の簡易トイレがあるということでございますけれども、これについて御存じかどうか、また、応急救助物資の中に含まれているのかどうか、お伺いします。 26: ◯答弁健康危機管理課長) オストメイト用の簡易トイレについてでございますけれども、県として試行的に2台ほど運用しているところでございます。限られた台数ではございますけれども、関係団体との情報共有を密にして、必要な場合には活用してまいりたいと考えております。 27: ◯要望質疑(下西委員) オストメイト用のトイレについては承知されているということで、備蓄品の中には2つ、試行的に入っているということでございます。少ないですけれども、これは非常に重要なことだと思います。普通の簡易トイレについては、約7,600個余り備蓄されておりまして、きちんと表示もされております。せっかくオストメイト用のトイレが2つでも備蓄されているということであれば、そういったことも表示していただきたいと思います。オストメイトの人たちは、従来の災害用のトイレを利用するのは大変難しい、無理があると言われております。排せつの処理の仕方というのは全く違ってくるわけでございます。過去、避難した人の中には、大勢の人がいる中で、排せつ物が突然漏れて、被服を汚してしまった。でも、着替えもシャワーもできない。そういった恐怖、便とか尿が出るという思いから、食欲もなくなり、食事や水分も制限したと証言されておられます。現在2個ということでございますが、さらに増やしていただくことも要望しておきます。  また、市町の備蓄品についても、働きかけておいていただきたいと思うのですけれども、現状について、もし分かれば、教えていただきたいと思います。 28: ◯答弁健康危機管理課長) 申し訳ありませんが、市町の備蓄状況については、今、状況を把握しておりませんので、確認してまいりたいと思います。 29: ◯要望(下西委員) 現状、把握はされていないということでございますけれども、しっかり把握しておいていただきたいと思います。今は、公衆トイレにおきましては、オストメイト対応型のトイレがかなり設置されてきております。今後、多発する大規模な災害では、避難が長期になることも考えられることから、災害時の被災者のニーズに対応した簡易型のオストメイトトイレは必要になってくるのではないかと思います。現在、他県の市町におきましても、大規模な災害を受けて、導入が進んでいるようでございますけれども、ぜひとも本県におきましても、こういった整備をさらに進めていただきますよう要望して終わります。 30: ◯質疑(下森委員) 私からは、本委員会の名称にもなっております危機管理強化対策についてお伺いいたします。先ほどの柿本委員の質問とちょっと被るところもありますが、お許し願いたいと思います。  本県においては、昨年7月、8月の豪雨災害、12月の福山市での鳥インフルエンザの発生、年明けのオミクロン株の急増、そして、先ほど言いました1月22日の大分県の震度5強、広島県府中町での震度4の地震など、様々な危機が我々の身近に発生しております。何よりも優先される県民の安全の確保のために、核となる本県の危機管理対策について、あらゆる視点で強化を図ることにより、県民の安心につなげていく必要があると考えております。しかしながら、聞くところによりますと、先般、生活福祉保健委員会の委員、あるいは本特別委員会の平本副委員長から聞こえてくるのは、危機管理課の顔が見えないという声です。これは、危機管理課が仕事をしていないということではありません。私は、顔が見えないのは、縁の下で頑張っておられ、大事に至っていないからだと思っておりますが、確かに本委員会での危機管理課からの資料提出は乏しく感じているところでございます。  そこで、危機管理事案に当たり、先ほど質問がありました地震以外を統括する立場である危機管理課の対応として、庁内の対応体制の構築や対策中の管理、課題の抽出、次回に向けた検証、改善対応など、どのような行動を取られたのか、まずお伺いいたします。 31: ◯答弁危機管理課長) 本県では、広島県危機管理基本指針において、危機事案に対する全庁的な体制といたしまして、災害対策本部事務局を危機管理監が担い、想定される事案ごとに対応を行う事案対策部を定めております。自然災害やテロ事件につきましては危機管理監が、鳥インフルエンザ等の重大な動物感染症につきましては農林水産局が、そして、新型コロナウイルス感染症につきましては健康福祉局がそれぞれ事案対策部となるなど、事案ごとにそれぞれが主体となり、適切な対応が取れるよう、体制を構築しております。  また、こうした様々な危機事案に対しまして、危機管理推進責任者会議や推進委員会議を随時開催いたしまして、事案対策中の情報共有や課題への対応等を行いまして、危機管理体制の強化を図っているところでございます。  危機管理課におきましては、自然災害全般の対応に加えまして、新型コロナウイルス対応といたしましては、医療機関向けの医療資機材の調達業務を担っているほか、このたびのオミクロン株の感染急拡大を受けまして、この1月8日にはライフライン事業者との連絡会議を急遽開催し、感染症対策と社会機能の維持の両立について知事から各事業者に直接要請したところでございます。  また、鳥インフルエンザ対応といたしましては、迅速かつ円滑な防疫措置を実施できるよう、昨年12月の発生時にも自衛隊への災害派遣要請を念頭に置いた情報共有や、石油商業組合からの燃料調達に向けた事前調整などを危機管理課で実施していたところでございます。  今後も、様々な危機事案について平時からの備えと体制強化を図るとともに、危機事案の発生時には県民の安全・安心を確保できるよう、関係部局とも緊密な連携を図りまして、適切な危機管理対応を図ってまいりたいと考えております。 32: ◯要望質疑(下森委員) 先ほど、担当課の顔が見えてこないと言いましたが、今、情報化社会が発展している中でありますので、いろいろなところでそういった活動をしていることを今後しっかりとアピールしていただきたいと思います。  先ほどの海堀先生のお話にありましたが、災害による犠牲者を一人でも少なくするためには、計画やマニュアルを作成するだけでは駄目だと。日常から訓練、体験、あるいは習慣づけによる実効性を高める必要があること。また、異常事態の想定に基づいた準備が非常に重要であることから、例えば南海トラフ地震を想定した机上だけではない様々な備え、自然災害とコロナ急増など複合的な危機事案が発生した場合の対策、消防局の救急搬送が困難となっている事案への支援の対応、災害ボランティアを効果的に機能させる調整役の育成やノウハウの研修、想定される鳥インフル、コロナ対策などの危機事案に対して迅速な対応を可能とする危機管理課での当初予算での事前一括計上など、危機管理課が先頭に立ち、対策を打つべき課題が多くあるはずです。  そこで、こうした課題を克服するために、海堀先生のお話を踏まえ、広島県全体の危機管理のあるべき姿勢について、危機管理監の所感をお伺いいたします。 33: ◯答弁(危機管理監) 近年の頻発化、激甚化する自然災害、また、全国で猛威を振るっております新型コロナウイルス感染症など、様々な危機事案に対しまして、県民の安全・安心を確保するため、県職員が一丸となって対策に当たることはもとより、県、事業者、市町、国などの行政機関が一体となりまして、行動していく必要があると認識しております。  海堀先生の御講演にもありましたけれども、本県は幾度となく大きな災害に見舞われまして、多くの県民の命が失われてきました。県民の命に直接影響を及ぼす大雨等による自然災害への備えは非常に重要であると考えております。御講演の中で、特に、防災は自然現象そのものをなくすことではなく、それが大きな災害につながらないようにすることというお話がございました。全く同感でございます。本県といたしましても、平成27年からは、「みんなで減災」県民総ぐるみ運動を展開しております。また、平成30年7月豪雨災害を受けまして、避難行動の調査分析結果を基にしまして、昨年度からひろしまマイ・タイムラインの取組、また、自主防災組織による避難の呼びかけ体制の構築といった取組を進めているところでございます。また、初動応急対応につきましても検証を行いまして、災害対策本部にオペレーションルームを整備するとともに、デジタル技術を活用しまして、情報収集のツールを整備して、出水期までに市町と繰り返し連携して訓練を重ねてまいりました。その結果、昨年7月、8月、大雨が降って災害が生じましたけれども、その際にも効果を発揮したと考えております。  今後とも、それぞれの危機事案に対する備えが災害時に迅速かつ的確に行えますよう、所管する部局とともに、想定される課題につきまして情報共有や意見交換を行うなど、平時からの不断の見直しを行ってまいりたいと考えております。  また、広島県危機管理基本指針の冒頭にございますけれども、災害対応、4つの原則というものを胸に職員の研修や訓練を重ねまして、職員一丸となって職責を全うする意識を醸成し、さらなる防災対策の強化につなげてまいりたいと考えております。  本日の海堀先生の御講演をしっかり踏まえまして、災害死ゼロを目指して、県民の皆様一人一人が災害から自ら命を守るために適切な行動を取っていただけるように取り組んでまいりたいと考えております。どうぞよろしくお願いします。 34: ◯要望(下森委員) 最後に要望でありますが、危機管理強化に向けて、あらゆる危機事案をしっかりと想定し、関係機関との強固な連携の下、より実効性のある日々の備えに積極的に取り組んでいただきますよう強くお願い申し上げ、私の質問を終わります。  (7) 閉会  午後4時1分 ○ 参考人名簿   広島大学 防災・減災研究センター センター長 海堀 正博 発言が指定されていません。 広島県議会 ↑ 本文の先頭へ...